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カポホの近くにある家に滞在していた時、そこに住んでいた女性が友達のネコの親子を預かっていたことがあった。彼女が留守にしていた間、僕が彼らの面倒をみた。面倒をみるといっても、えさを容器からえさ入れに入れ換えるだけだったのだが。
ある日何の気なしに誰も使っていない寝室の方に行ってみた。当時住んでいた女性が使っていた方の寝室は、玄関の外の右手の階段を登って左手にある。反対の右手に3段下がったところにその部屋はあった。部屋といっても小さな窓が壁の上の方にあるだけの粗末な部屋だった。バスルームの上に位置する。現在は壁に大きな丸い穴を開けて窓が作られている。青いペンキが壁一面に塗られている。天井からロープで吊るされたベッドもある。快適なベッドルームに変身している。
その部屋の手前と両横には板でできた幅1メートル程度のベランダ廊下が取り付けてある。両横のベランダ廊下の突き当たりには、1階西側の屋根がある。ベランダ廊下の手すりに上がれば簡単に屋根に登ることができる。水ポンプに電源を供給する自動車バッテリーは太陽電池パネルで充電している。それを2枚に増設した時は、そこから屋根に登って、新たに買った太陽電池パネルを取り付けた。
波型トタンの屋根を見ると、あちこちにウンチのようなものがあった。屋根に登って近付いてみると、紛れもない動物のウンチだった。手袋を取ってきて、カラカラに乾いていたウンチを拾って、遠くに放り投げた。ウンチの跡は消えなかった。それは数個あった。犯人は我が家で預かっていたネコの親子以外には考えられなかった。
早速ネコが屋根に登れないようにした。床下に放置してあった板を運び上げて、両方のベランダ廊下の突き当たりに立てかけた。2800坪ある敷地内にはいくらでもウンチをするところがあるのに、ネコたちはなぜ屋根の上を便所に決めたのか理解できなかった。飼い主の家でも屋根でウンチをしていたのかもしれなかった。飼い主はヒロの町の中に住んでいるようだった。水道が来ているところだろう。だったら問題ない。
飼い主は背の高い若い白人女性だった。僕がネコの餌を買ったことに対して、お礼を言いに来た。別の子ネコを近所のハワイ人女性に預けたと言うので、一緒に引き取りに行った。しかしその子ネコは死んでいた。それを知って彼女は涙を流した。
ネコがウンチをしていた屋根に落ちた雨はまず台所のそばにある背の高い木製水タンクに流れ込むようになっている。溢れた水はビニールパイプを通って、バスルーム前の高さは低いが直径18フィートのタンクにためられるようになっている。それらのタンクから台所やバスルームにそれぞれ専用のポンプで水が送られるようになっているが、その間にはフィルターはない。自動車用のバッテリーで動くポンプは馬力が弱く、圧力タンクも小さいので、フィルターを通すと水の出が悪くなるからだ。
つまりネコのウンチが溶け込んだ水がストレートに蛇口から出ていたのだ。もちろん飲み水や歯磨きの水は買ってきた飲料水を利用していたので、その水が口に入ることはなかった。しかしコップや皿はその水で洗っていた。シャワーや洗面もその水を利用していた。
そうした事態が発生していた直後に、僕に魚料理をご馳走したいと言う女性が現れた。彼女はここに住んでいた女性の友達だった。ダンス教室の先生と生徒として知り合ったようだ。金曜日の夜にこの家に来るというので楽しみに待っていた。食事もせずに待っていたがなかなか来なかった。来たのは8時ごろだった。もう真っ暗になっていた。日本製のジープタイプの車で来た。
食事は済んだ?と聞かれたので、びっくりしてまだだと答えると、おもむろに持ってきたレタスをあの水で洗い始めた。あっと思ったがもう手遅れだった。洗ったレタスにコピーのカニの足を載せドレッシングをかけただけの、食べ物だった。ワインも持ってきていた。なるべくレタスは食べないようにして、カニの足を少しだけ食べた。アルコールは飲まないのだが、この日は特別に消毒代わりに飲んだ。
彼女がレンタルビデオ店から借りてきたというアーノルドシュワルツネッガー主演のトータルリコールという映画を一緒に見た。彼女はそういう映画が好きだと言っていた。テレビやビデオをみる時は、発電機を動かすのである。彼女の子供たちの写真も見せてくれた。元亭主は日系人で長男と一緒に現在カリホルニアに住んでいるとも言っていた。当時彼女は僕より1歳上の41だと言っていた。
帰国後もネコのウンチのおかげでしばらく気分が悪かった。でもウンチは毒ではない、毒よりましだと自分に言い聞かせて納得するより仕方がなかった。